寝台特急「はやぶさ」の旅
1.寝台特急「はやぶさ」の現状 寝台特急「はやぶさ」は、東京と熊本を結ぶ夜行列車である。 2008年現在、九州アクセスの寝台特急はこの「はやぶさ」と、 門司まで連結運転され、大分を目指す「富士」しかなくなってしまった。 その「はやぶさ」と「富士」も廃止の噂があり、 とうとう九州アクセス寝台の全滅も近くなっていると云わざるを得ない。 北海道アクセスの「北斗星」、「カシオペア」、「トワイライトエクスプレス」がプラチナチケットとして、 特にA寝台が取りにくい現状と比べると、この差は雲泥である。 その背景には車両の老朽化などもあり、 また新しい設備投資に見合う利用客増も期待できないなど、 “民間企業”となったJRの経営判断もあるのだろう。 しかし寝台特急には新幹線などにはない、特別な“旅情”があり、 また飛行機や新幹線がいくら速くても、寝ている間に移動できるメリットは大きい。 今後も新しい形での寝台列車の存続を心から期待したい。 |
2.寝台特急「はやぶさ」のダイヤ 寝台特急「はやぶさ」は東京−熊本間の1315.0kmを結ぶ寝台特急で、14系客車を用いている。 牽引機は東京から下関までが直流区間専用のEF66型電気機関車、 下関から門司までが関門トンネル専用の塩害対策済みのEF81型電気機関車、 そして門司から熊本までが交流区間専用のED76型電気機関車である。 東京から門司までは東京−大分間の寝台特急「富士」と連結されて運転される。 下り列車は18:03に東京駅を出発し、翌朝08:32に下関に到着する。 ここで機関車を付け替えて08:38に出発し、08:46には門司に到着する。 ここで「富士」と切り離し、08:59に熊本に向けて出発、11:49に終点熊本に到着する。 上り列車は15:57に熊本を出発し、18:46に門司に到着、 大分からの寝台特急「富士」と連結して19:15に出発、関門トンネルを潜り、19:22に下関に到着する。 19:27に機関車を付け替えて出発し、翌朝09:58に東京に到着する。 |
牽引機関車
東京−下関間 EF66型電気機関車(直流専用機) 取材場所:東京駅 |
門司−熊本間 ED76型電気機関車(交流専用機) 取材場所:熊本駅 |
客車
東京−熊本間 14系客車 取材場所:熊本駅 |
3.A寝台一人用個室“シングルDX”の室内
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3−1.A個室のアメニティ | ||||
寝台特急「はやぶさ」のA寝台個室“シングルDX”のアメニティは、 タオルが1枚だけである。 それでもJR九州のオリジナルで、 「はやぶさ」と「富士」、それに既に廃止となった「さくら」のヘッドマークがデザインされている。 |
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ビニール袋に入った状態の表側 | ビニール袋に入った状態の裏側 | 広げると3つのヘッドマークがデザインされている。 |
3−2.シングルデラックスの寝台設備 室内にはソファがあって、それがシングルベッドになる。 出発時間が早いため、 始発駅ではソファのままで、自分でベッドに変形させる。 |
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ソファーの肘掛けをあげると、 それと同時に背もたれがフラットになる仕組みになっている。 またソファ下のレバーを操作して、 寝台の幅を変えることができるようになっている。 |
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ベッド下に収納されている安全柵は、 引き出して立てると固定するようになっている。 何だか病院のベッドみたいだなと思った。 ベッドの下には足元燈と、 さらに非常用のハンマーが設置されている。 万が一の時はこれで、 ガラスを割って車外に脱出するようににっている。 |
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3−3.シングルデラックスの車内設備 A寝台一人用個室“シングルデラックス”は1両しかないため、 すべてが「喫煙室」扱いで灰皿が設置されている。 さらにペーパータオルとくず入れ、スリッパが装備されている。 |
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テーブルは 磁石で壁に固定できる。
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窓側にテーブルがついている。 机代わりには少し小さすぎるが、 それでもお菓子や飲み物、 弁当などを置くには重宝である。 |
テーブルを開くと中に洗面台。 石鹸も装備され、 ちゃんとお湯も出るようになっている。 さすがはA寝台だけのことはある。 |
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廊下側扉上のスペースは荷物置き場になっている。 部屋が狭い分、このスペースはありがたい。 カメラ用バッグ、旅行用バッグ、 お土産の手提げ袋が十分に置けた。 |
天井の様子。 蛍光灯の室内灯とエアコンのダクトがあった。 |
室内燈、床燈のスイッチ、冷房と暖房の調節つまみ、 それと警報用のボタン。 その下には枕元を照らすライトと寒暖計。 寒暖計にはよく見ると“JNR”のマークがある。 国鉄の分割民営化から20年たってもそのままになっていたのだろう。 |
3−4.その他の車内 山陽本線、東海道本線に対して、 海側が室内になるように設計されているため、 廊下は山側になる。 この奥に洗面所とカード式公衆電話が設置されている。 |
4.熊本から東京へ−寝台特急「はやぶさ」の旅
4−1.小雨の中の旅立ち 2008年6月21日土曜日、 小雨の降る中、寝台特急「はやぶさ」は、 熊本駅3番線ホームに到着した。 ここから門司駅までの牽引は、 電気機関車ED76型69号機。 形式名のEDの“E”は、 Electronic Locomotive(電気機関車)を表し、 次の“D”は動軸が4本ということを表す。 数字は最高速度85km/h以上以下と、 交直流の種別を表し、 70番台は85km/h以上の交流機を表している。 この日は大雨の影響で熊本以南が不通で、 バス代行運転という最悪のコンディションだが、 それでも上り列車は何とか運転していて、 寝台特急「はやぶさ」も予定通りに到着した。 |
そして定刻通り15:57、熊本駅を出発した。 18時間1分の東京への旅立ちだった。 程なくして車掌が検札に回ってくる。 乗車券・熊本→東京都区内 6月21日から8日間有効\14,700、 特急券・A寝台券(個) 熊本→東京6月21日はやぶさ号8号車 12番個室 シングルデラックス\16,500 内訳:特3,150、寝13,350。 “博多 6.21 車掌区”という、 スタンプを押して貰い、 そのあと買い込んだビールを早速飲む(^_^;) |
4−2.2度の牽引機の付け替え 門司駅と下関駅で牽引機の付け替えを行う。 門司駅の停車時間は29分。 その間に列車は一端回送し、 大分からの寝台特急「富士」の到着を待って連結される。 ここからの牽引機は、EF81型400番台で、 これは基本番台に関門トンネル対応の、 耐塩害措置を追加した機種である。 EF81型電気機関車は関門トンネルを抜けると、 下関で外され、 ここから東京まではEF66型にバトンタッチする。 下関の停車時間は5分。 ここからは一路、東京を目指して本州を北上する。 |
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列車の連結や分離はなぜか人の心を引きつける。 このときも多くの人がカメラを構え、 到着した「富士」に、 先に到着して回送された「はやぶさ」が、 連結するシーンに人が群がっていた。 |
関門トンネルをEF81型で通過し、 下関で5分の停車時間に、 牽引機をEF66型に付け替える。 ここから東京に向けて、 夜の旅が始まる。 |
4−3.東京到着−18時間1分の旅の終わり 門司で大分からの寝台特急「富士」を連結した、 寝台特急「はやぶさ」は、 定刻通り、09:58に東京駅に到着した。 |
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この「富士/はやぶさ」のヘッドマークも、 何時まで見ることが出来るのであろうか。 |
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熊本から乗ってきた8号車A寝台「シングルデラックス」。 一晩を過ごした8号車12番個室ともお別れだ。 この時の8号車はオロネ15-3001だった。 |
「はやぶさ」と「富士」の連結部分。 熊本と大分から二つの列車は、 門司で連結され東京まで夜通し走ってやってきた。 |
2009年3月13日、寝台特急「はやぶさ」は最後の旅となった。 翌日のダイヤ改正でその歴史に幕を閉じた。 |
取材期間:2008年6月21日土曜日〜6月22日日曜日 取材区間:熊本駅(JR九州)〜東京駅(JR東日本) |
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