寝台特急「北斗星」の旅
1.寝台特急「北斗星」の現状 寝台特急「北斗星」は、上野と札幌を結ぶ夜行列車である。 年々寝台夜行列車の廃止が続く中で、 「北斗星」は人気でなかなかチケットがとれない列車となっている。 同じ区間を走る「北斗星」の上位バージョンともいえる、 「カシオペア」と同様、個室はプラチナチケットといわれている。 A個室は“シングルデラックス”よりも上位の一人用“ロイヤル”と、 同格の二人用“ツインデラックス”がある。 またB個室も一人用“ソロ”と二人用“デュエット”が用意されている。 食堂車“グランシャリオ”も連結されていて、 ゆったりと北への旅を楽しむことが出来る。 ただ、北海道新幹線の開業準備のため、 1日2往復から1往復になり、 また北海道新幹線新青森−新函館間が実際に開業した際、 この列車が残されるかどうかも心配である。 |
2.寝台特急「北斗星」のダイヤ 寝台特急「北斗星」は上野−札幌間の1,214.7kmを結ぶ寝台特急で、24系25形客車を用いている。 24系は集中電源方式のため、荷物車を連結してそこから車内利用の電気を供給する。 牽引機は上野から青森信号所までが交直流用のE81型電気機関車である。 寝台列車牽引用の流星マークが側面に施された専用機のほか、 運用の都合で「カシオペア」用のEF81型が用いられることもある。 青森信号所から函館は青函トンネルを潜るために塩害対策が施された専用機、 ED79型交流電気機関車を使用する。 函館から札幌までは非電化区間があるためにDD51型ディーゼル機関車を重連で用いる。 下り列車は19:03に上野を出発し、翌朝06:34に函館に到着する。 ここでDD51型ディーゼル機関車重連に付け替えて06:42に出発し、11:15に札幌に到着する。 上り列車は17:12札幌を出発し21:41に函館に到着してED79型電気機関車に付け替える。 21:48に函館を出発して翌朝09:38終点上野に到着する。 上下線とも青森信号所で機関車の付け替えをするが当然旅客扱いは行わない。 |
牽引機関車
上野−青森信号所間 EF81型電気機関車(交直流専用機) 取材場所:上野駅 |
青森信号所−函館間 ED79型電気機関車(交流専用機) 取材場所:函館駅 |
客車
上野−金沢間 24系25形客車 取材場所:上野駅 |
3.A寝台一人用個室“ロイヤル”の室内
さすがは“SA1”クラスだけはあって、 ちゃんと玄関がある。 |
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寝台特急「北斗星」の個室は、 カードキー式である。 カードは使用後は記念に持ち帰っていい。 |
3−1.A個室のアメニティ | |||||||||||||
寝台特急「北斗星」のA寝台個室SA1“ロイヤル”のアメニティは、 洗面セットがベッドマークの入ったポーチ入りで付いている。 |
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3−2.ロイヤルの寝台設備 室内にはソファ兼用のシングルベッドがある。 しかし別に椅子もあるため、完全にソファへの変形はない。 |
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ベッドの下にはさらに予備のベッドが収納されていて、 二人で使用する場合のエキストラベッドとなる。 勿論、二人で使用時には追加料金が必要となる。 |
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3−3.ロイヤルの車内設備 A寝台一人用個室“ロイヤル”にはシャワー設備が付いている。 ここには水回りが集約されていて、 洗面設備、トイレが設置されている。 |
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ベッドの反対側に、 水回りの扉がある。 “ロイヤル”らしく、重厚である。 |
扉を開けると正面にシャワー設備がある。 シャワー10分だが、 リセットすれば何度でも使える。 |
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シャワー室の正面には シャワー設備がある。 利用時間は10分で、 つまみで調整してお湯も出る。 シャワーのスタートとストップは、 スイッチで操作する。 シャワー室の右皮には、 洗面設備とトイレがある。 シャワー使用時のため、 普段は収納されているが、 使用時は留め金を外し、 倒す形で出す。 上が洗面台で、 下が洋式トイレである。 |
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トイレットペーパーは収納式。 シャワー設備としても使用するため、 濡れないようになっている。 「使用後は必ずお閉め下さい」と書かれている。 |
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廊下側には、ヘアドライヤーが設置されている。 掃除機のように見えるが、 逆に風を出して髪を乾燥させる。 威力は正直云ってそれほど強くないが、 列車内を考えれば仕方がないだろう。 |
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廊下側扉上のスペースは荷物置き場になっている。 一人用個室だが二人分の荷物スペースがある。 |
天井の様子。 エアコンのダクトがあった。 |
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壁にはテーブルが付いていて、ちょっとした食事も出来る。 ウエルカムドリンクや翌朝のモーニングサービスを置く。 固定でこの大きさはさすがにロイヤルである。 |
壁にはテレビと室内電話が付いている。 電話は食堂車と繋がっていて、 パブタイムの飲み物や料理をデリバリーしてもらえる。 |
テーブルの下には、 ゴミ箱が設置されている。 |
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寝台特急「北斗星」の個室はカード式で、カードを差し入れて施錠と解除を行う。 |
3−4.食堂車「グランシャリオ」 食堂車「グランシャリオ」は7号車で、厨房、売店とテーブル席が1両に集約されている。 ディナータイムは事前予約が必要で、3日前までにみどりの窓口で食事券を購入する。 食事券には個人名が記されていて、その段階でフランス料理のコースか懐石御膳を選択する。 ディナータイム終了後のはパブタイムとして軽食やアルコールなどが提供される。 ラストオーダーは10:00p.m.、営業終了は11:00p.m.である。 翌朝は6:30a.m.からモーニングタイムとなり、朝食メニューは和食か洋食から選択する。 |
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3−5.その他の車内 6号車はミニロビーになっていて、テレビや自販機が設置されている。 またシャワー室が2つ設置されている。 そのほか、カード式公衆電話も設置されている。 |
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10号車はA寝台個室「ロイヤル」とB寝台2人用個室「デュエット」の2種類がグレードが混在している。 使用列車はオロハネ24-551であった。 |
4.上野から東室蘭へ−寝台特急「北斗星」の旅
4−1.リフレッシュ休暇旅行−上野からの出発 2008年11月12日、リフレッシュ休暇を利用して北海道旅行に出た。 6:00p.m.前に上野駅に到着し、“五つ星広場”でゆったりと列車の入線を待つ。 6:50p.m.頃になって「北斗星」が推進回送されてくる。 推進回送とは機関車が客車を牽引するのでははなく、 客車を機関車が後ろから押す形で回送運転されることである。 上野駅下のホームは頭端式のためバックで運転する形で尾久の車両基地から回送されてくる。 勿論、機関士には前が全く見えないため、 通常の運転での最後尾になる客車の連結部の扉を開けて、 推進運転士と呼ばれるもう一人の運転士が、 前方の信号や安全確認をして無線で機関車の運転士に指示を出しながら回送される。 この推進回送も上野駅での寝台列車の名物の一つである。 |
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今回はA寝台個室“ロイヤル”を取った。 “ロイヤル”は9号車の半分と10号車半分にあり、 今回は10号車の方に予約を取れている。 「乗車券 幕張→東室蘭 11月12日から7日間有効 \15,560」と、 「特急券・A寝台券(個) 上野→東室蘭 11月12日北斗星号 10号車12番個室ロイヤル \20,070内訳:特2,890・寝17,180」を確認し、 夢にまで見たSA1“ロイヤル”の部屋に入る。 |
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寝台特急「北斗星」のエンブレム。 「SAPPORO」「539」「TOKYO」と、 その下は「JR HOKKAIDO」とあり、 さらにその下には「HOKUTOSEI」と書かれている。 7つの☆と一つの大きな☆がある。 |
4−2.ウエルカムドリンクとディナータイム 19:03、定刻通り寝台特急「北斗星」は東北本線の長い旅に出た。 列車が走り出してまもなく、ドアがノックされ、ウエルカムドリンクが運ばれてきた。 白ワインハーフボトル「2007 Muller-Thurgau」、 ウイスキーミニボトル「The Blend of Nikka Whisky」、 伊右衛門250ml缶、 ボルビック小ボトル、 ウイスキー用のアイスセット これらはSA1だけの特権である。 そのあと車掌が検札に来たのだけれど、切符が見つからなくなってしまった。 いろいろと探すが見つからない。 車掌も「あとでまた来ますよ」と云ってくれ、部屋のカードキーだけ置いていってくれた。 車掌が出て行ってから自分の着ている服の胸ポケットに入っていることに気付いた。 まるでコントみたいな話だが、ついついやっちゃってしまった。 大宮で乗客が乗り込んできた時に再び来て検札して貰う。 |
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日本の寝台列車のうち食堂車を連結しているのは、 「北斗星」、「カシオペア」、 そして「トワイライトエクスプレス」だけである。 「北斗星」の食堂車には「グランシャリオ」という愛称が付けられていて、 4人掛けのテーブルと2人掛けのテーブルが設置されている。 ディナータイムは事前に予約しなければならず、 メニューはフランス料理コース\7,500と北斗星懐石御膳\5,500があり、 今回は北斗星懐石御膳の予約券を購入しておいた。 事前に予約してあるために既に席も決まっていて、 席に着いてからドリンクメニューを渡される。 せっかく北海道に行くのだから“クラシック”をオーダーした。 “クラシック”は北海道限定のビールである。 料理は確かに美味く上品な味だが、やはり価格的には高いと思う。 それでも走る列車の中で温かいお吸い物を飲めるのは特別である。 フランス料理は一皿ずつ出されるが、 懐石料理はいっぺんに出されるために先に喰い終わってしまう。 |
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4−3.モーニングサービスと函館の8分間 翌朝は5:45a.m.に起床し、函館駅に到着するのを待つ。 6:00a.m.にモーニングサービスをお願いしていたので、 シャワーを浴びてから届けられたコーヒーで一息つく。 これもSAクラスならではの特権である。 函館駅では8分の停車時間に青函トンネル専用のED79型電気機関車から、 北海道用のディーゼル機関車の重連に付け替えが行われる。 この先は非電化区間もあるため、ディーゼル機関車が重連で使用される。 寝台列車専用のブルーに塗色されたDD51型ディーゼル機関車だ。 |
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函館駅は全ての列車がスイッチバックする。 かつて青函連絡船の連絡駅と使用していた頃の名残である。 そのため1番線から7番線は頭端式になっているが、 8番線だけは機回りが出来るようにその先にも線路がある。 「北斗星」は8番線に停車して先頭のED79型電気機関車を切り離し、 反対側に青いDD51型ディーゼル機関車を連結させる。 |
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DD51型1143号機。 | DD51型1137号機。 | ||||
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漸く朝日が昇ってきた函館の街。 |
4−4.東室蘭での途中下車 車販で駅弁を購入して朝食とし、 喰い終えてから食堂車「グランシャリオ」に行ってコーヒーだけをオーダーする。 本日2杯目のコーヒーである。 車窓を見ながら朝の北海道の景色を楽しむ。 やがて列車は長万部を出て室蘭本線に入る。 09:32に寝台列車「北斗星」は定刻通り、東室蘭駅に到着する。 のんびりしていたら「まもなく東室蘭です」と車内放送が入り、 慌てて支度をして下車した。 昨日夕方に出掛けた時にはコートは少し暑いなと思ったが、 東室蘭で降りた時には空気が冷たく、コートを着てきて良かったと思った。 本当は札幌まで乗り立ったが、 室蘭本線、母恋駅、室蘭駅に行くためにここで下車したのである。 |
函館本線森駅からの車窓。 「いかめし」で有名な森駅は名前からの連想を裏切って、 実際は海の間近の駅である。 |
5.東室蘭からの出発−寝台特急「北斗星」、怒濤の28連写
寝台特急「北斗星」は函館から札幌まで、 DD51型ディーゼル機関車の重連で牽引される。 機関車はホームからはみ出して停車する。 |
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ゆっくりと東室蘭のホームから動き出した「北斗星」。 先頭のディーゼル機関車はDD51型1137号機。 |
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後方のディーゼル機関車はDD51型1148号機。 | |
牽引能力を補完するため、重連での牽引になる。 JR北海道所属のD51型は、 ブルートレインに合わせて青く塗色され、 流星をイメージしたデザインが側面に描かれている。 |
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先頭に電源荷物車が連結されている。 荷物専用車に、 客車への電源供給用の発電機を積んでいる。 車両はカニ24-508。 “カ”は自重47.5t以上、 “ニ”は荷物車を表す。 |
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電源荷物車と11号車の連結部分。 | |
11号車はオハネフ25-14。 “オ”は自重32.5t以上37.5t未満、 “ハネ”はB寝台車の意味で、 “ハ”は座席車で普通車と同じグレード、 “ネ”は寝台車の意味である。 “フ”は緩急車で“ブレーキ”が付いているという意味、 つまり車掌室のある車両ということである。 開放B寝台。 |
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11号車と10号車の連結部分。 車掌室が見える。 |
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10号車はオロハネ24-551。 “オ”は自重32.5t以上37.5t未満、 “ロハネ”はA寝台とB寝台の混合車で、 “ロ”は座席車でグリーン車と同じグレード。 A寝台一人用「ロイヤル」と、 B寝台二人用「デュエット」の混合である。 |
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10号車と9号車の連結部分。 | |
9号車はオロハネ25-503。 “オ”は自重32.5t以上37.5t未満、 “ロハネ”はA寝台とB寝台の混合車。 A寝台一人用「ロイヤル」と、 B寝台一人用「ソロ」の混合である。 |
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9号車と8号車の連結部分。 | |
8号車はオロネ25-508。 自重32.5t以上37.5t未満のA寝台車。 A寝台二人用個室「ツインデラックス」。 |
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8号車と7号車の連結部分。 食堂車の搬入用扉が見える。 |
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7号車はスシ24-507。 “ス”は自重37.5t以上42.5t未満、 “シ”は食堂車の意味である。 「グランシャリオ」のテーブルやライトが確認できる。 |
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7号車と6号車の連結部分。 7号車から11号車がJR東日本所属、 1号車から6号車がJR北海道所属である。 |
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6号車はスハネ25-501。 自重37.5t以上42.5t未満のB寝台車。 B寝台一人用個室「ソロ」にミニロビーが付いている。 ミニロビーにはシャワー室が付いている。 |
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6号車と5号車の連結部分。 5号車側にエンブレムが見える。 |
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5号車はオハネ25-551。 自重32.5t以上37.5t未満のB寝台車。 B寝台一人用個室「ソロ」。 |
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5号車と4号車の連結部分。 5号車にも乗務室があるが、 ここにはブレーキ設備がない。 |
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4号車はオハネ25-565。 自重32.5t以上37.5t未満のB寝台車。 B寝台二人用個室「デュエット」。 |
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4号車と3号車の連結部分。 | |
3号車はオハネ25-563。 自重32.5t以上37.5t未満のB寝台車。 B寝台二人用個室「デュエット」。 |
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3号車と2号車の連結部分。 | |
2号車はオハネ25-561。 自重32.5t以上37.5t未満のB寝台車。 B寝台二人用個室「デュエット」。 |
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2号車と1号車の連結部分。 | |
1号車はオハネフ25形。 残念ながら手すりが邪魔で番号までは確認できず。 自重32.5t以上37.5t未満のB寝台車。 B寝台四人用個室「Bコンパートメント」。 「Bコンパートメント」は、 4人用で鍵のかかる個室になるが、 ばら売りもされて、 その場合は鍵をかけずに、 普通の開放B寝台として使用する。 |
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1号車が最後部になる。 電源車があるため、 最後尾に客が来られるのは、 函館でスイッチバックしてからとなる。 このあと東室蘭を出た「北斗星」は、 札幌を目指して北の大地をひた走るのであった。 |
取材期間:2008年11月12日水曜日〜11月13日木曜日 取材区間:上野駅(JR東日本)〜東室蘭駅(JR北海道) |
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