吉備・安芸の旅




 1.岡電、広電完全取材計画

去年は長崎、熊本、鹿児島と主に九州地区の路面電車を中心に取材し、
また夏休みには松山にも行って伊予鉄市内線も取材した。
去年終わった段階で日本の路面電車の企業体、全21社、全603電停のうち、
未取材なのは富山地鉄市内線の新規開通の富山都心線4電停と、
再取材が必要な南富山駅前電停の計5電停、
岡山電軌の11電停、そして広島電軌の6電停を残すまでとなった。
日本の路面電車の全電停の取材というライフワークも残すところ26電停となった。
そこで残りの3社のうち、今年2月に2社の取材を敢行することにした。
そうすれば今年中の目標達成も現実味を帯びてくる。
岡山と広島は新幹線で40分の距離で十分に移動が可能だ。
そこで岡山と広島を一日ずつ、1泊2日で取材することにした。
また2月にこだわったのは別の理由もある。
岡山電軌には東武日光軌道線で100形として活躍した車両が、
1968年、1969年に譲渡されて3000形として活躍、
現在でもそのうち3両が車席を残し、さらに2両は動態保存されている。
3007は水戸岡鋭治氏がリニューアルデザインを担当し、
烏城と呼ばれる岡山城をもして黒く塗られ、
「KURO」として東山線を1日5往復の運転がされている。
また3005は東武日光軌道線時代の塗色に戻され、
毎月第1土曜日に東山線を2往復する。
今回はこの東武日光軌道線色の3000形を狙いたいと思い、
2月の第1土曜日である2月4日に岡山電軌の取材を企画したのだ。
3000形は非冷房車のために6月から9月は運休する。
3月は仕事の予定があり、2月にどうしても取材を企画したかったのだ。
ネットで知り合った岡山在住の鉄道愛好家からの情報によると、
「KURO」は10時~13時の間に5往復、
東武日光色は11時台に2往復とのこと。
始発の新幹線に乗れば10時前に岡山に着くことは可能だが、
十分に取材するために前乗りを検討したい。
サンライズエクスプレスは岡山までは「…瀬戸」と「…出雲」が連結されていく。
前日の22:00に東京を出て、岡山には06:27に到着する。
金曜日に「サンライズ…」で岡山に行き、朝から岡山電軌を取材、
当日移動で広島まで行って一泊、翌日は広島電鉄を取材する。
この方針で以下のような計画を立てた。

2月3日(金)

20:45幕張※-総武緩行線・上り2015C(6)-20:51津田沼[16]
21:07津田沼※-総武快速線・上り2188F(28)-21:35東京[25]
22:00東京※-寝台特急「サンライズ瀬戸」(507/8:27)-

2月4日(土)

-寝台特急「サンライズ瀬戸」(507/8:27)-06:27岡山[11:47]

 ※岡山電軌 路面電車1乗車券 \400購入
 ※岡山電軌 全電停取材

18:14岡山-山陽新幹線「ひかり575号」(40)-18:54広島

 ※ヴィアイン広島チェックイン

2月5日(日)

 ※ヴィアイン広島チェックアウト

 ※広島電鉄 路面電車1乗車券 \600購入
 ※広島電鉄 全電停取材

13:44※広島-山陽・東海道新幹線「のぞみ126号」(247/4:07)-17:53東京

この計画に合わせ、「サンライズ瀬戸」はB寝台“ソロ”をJR稲毛駅のみどりの窓口で取り、
「ひかり575号」は指定席券売機で購入、
5日日曜日の「のぞみ126号」も指定席券売機で取ろうと思ったのだが、
急遽券売機のデータを見て、ひとつ前の「のぞみ32号」に変更する。
この列車は13:37に広島を出て、17:33に東京に到着する。
すべての列車のチケットが取れたところで、
ヴィアイン広島のホームページから早得プラン21の禁煙シングルを取る。


 2.節分…いざ、鬼ヶ島へ-旅の始まり

2月3日金曜日はちょうど“節分”だった。
ライフワークである路面電車の全電停取材の大きなキーポイントとなる、
岡山電軌、広島電鉄の全電停取材は、一種の勝負であり、
おいらにとっては鬼ヶ島への鬼退治と同じだ。
この勝負に勝つために、この日の昼食にはかつ丼を喰った。
そして仕事が終わっていったん自宅に帰り、
シャワーを浴びてから20:35の総武緩行線で秋葉原へ、
21:21の京浜東北線で東京まで出る。
今回は幕張から岡山までの切符を購入しているため、
幕張で改札を入る時に乗車券を自動改札機に通した。



東京駅構内のNRE売店で駅弁「冬の彩」1,300円を購入する。
9番線10番線ホームに上がって列車の到着を待ち、
列車の個室に荷物を置いてからNEWDAYSでビールと翌朝分のお茶などを買う。



今回は旅では岡山で下車するため、ほとんど寝るための時間しかない。
そこで室内を楽しむ余裕もなく、“シングルデラックス”では勿体ないため、
個室の中では一番グレードの低い“ソロ”を取った。
最初に部屋に入った感想は「狭!」だった。
“シングル”でも狭いと思ったが、“ソロ”はそれ以上だ。
急な階段の上にベッドがあるだけで、シングルベッドの上だけが唯一の生存空間となっている。
「これではまるで囚人みたいだ」と思った。
それでもバッグを置くスペースやハンガー、寝具やスリッパ、
それにビニール袋だけのゴミ箱も用意されていて、最低限の生活は出来るようになっている。
走り出してから車掌の検札が来て、検印を押して貰う。



ビールを飲みながら購入した弁当を喰い、仕事の疲れなどもあって、
東京駅を出てから約1時間、11:00p.m.には寝てしまった。
翌朝は06:27に岡山駅に到着予定なので、6:00p.m.にモーニングコールをセットする。
今回はシャワーを浴びることもなく、簡単な洗面と歯磨きだけなので、
それだけの時間で十分である。
しかしその計画は、翌朝の車掌の車内アナウンスで崩れたことを知らされるのだった。


 3.雪の30分遅れとマックのモーニング

翌朝、モーニングコールで6:00a.m.に目を覚ました。
前日は11:00p.m.には就寝していたため、
朝早かったが睡眠時間は十分だ。
暫くして車掌から車内放送があり、そこで列車が遅延していることを知った。
それによると米原地区の豪雪により約30分の遅れで走っているとのこと。
岡山到着は30分遅れの06:57の予定、
そのあとは通勤時間帯で多の列車との兼ね合いもあり、
出雲、高松の到着は1時間遅れになる予定だという。
そのため平行する特急列車の自由席に乗るようにとの案内があった。
今回は岡山で下車して、それから岡山電軌の取材に入るため、
この遅れは単なる取材時間の短縮で吸収出来るだろう。
岡山で「サンライズ瀬戸」を下車し、
「…出雲」との分割シーンを取材する。
列車の結合と分割は何度見てもワクワクする。
何でだろう…。



さらに気動車を中心に車両取材してから改札を出る。
駅前では桃太郎の銅像が迎えてくれた。



岡山は桃太郎モデルとなったとされる吉備津彦命の伝説がある。
吉備津彦命は「きびつひこのみこと」と読み、
鬼ノ城に住んでいる温羅という鬼を犬飼猛、楽々森彦、留玉臣の3人の家来と征伐し、
その祟りを鎮めるために釜の下に沈めたという伝説があり、
そこが吉備津神社となったという。
これがおとぎ話として桃太郎となったとされる。
朝食を喰おうと思ったが、
まだ朝は早くモーニングをやっているような喫茶店を探したが見つからず、
仕方なくMacDonald岡山駅前店でソーセージエッグマフィン440円喰う。
お腹を満たしてからいよいよ岡山電軌の取材を開始する。


 4.岡電取材-2両の3000形の勇姿

岡山電軌は以前に一度取材しているが、
その時は岡山・倉敷のフリーエリアを乗り放題に往復の新幹線が着く切符で、
新幹線の駅取材や水島臨海鉄道の取材など、
岡山電軌は乗り放題の対象になっていたので取りあえず乗ったという程度で、
取材の中心にはなっておらず、車両取材も不十分だった。
そこで今回は岡山電軌の取材を完結させるため、
未取材の全電停と営業運転中の全車両を取材することにした。
最初に岡山駅前電停で乗り込んだ電車の運転手から一日乗車券を購入する。



一日乗車券は600円でスクラッチ方式が採用されている。
表紙のイラストは両備グループのデザイン顧問の水戸岡鋭治氏である。
まずは東山電停まで行って点検中の9200形1011を敷地外から取材し、
小橋、中納言、県庁通り、城下、西大寺町、西川緑道公園と電停取材する。
東山電停に行って車両取材しながら“KURO”が出てくるのを待つ。
3000形3007は水戸岡鋭治氏によって車両の内外がリニューアルされ、
“KURO”という愛称が付けられている。
ネットの仲間から事前に寄せられた情報によると、
「10時から13時の間に5往復」とのことで、10:30a.m.頃に車庫から出てきた。



3000形は元東武鉄道日光軌道線100形で、1953年に10両が製造された。
日光軌道線は1968年2月に廃止され、車齢が若かったために岡山電軌に全車が譲渡された。
事故廃車1両、老朽化のための廃車が6両、そのうち5両は解体され、
1両は鉄道愛好家に無償譲渡された。
現存する3000形は3両で1両は休車状態だが、残った2両が冬季限定で営業投入されている。
ここで更に車両取材しながら3005を待つ。
ネットの仲間からの情報によると3005は「11時台に2往復」で、
しかも「毎月第1土曜日のみ運行」とのこと。
11:00p.m.を待つように東山車庫から3005を登場した。



3005は東武鉄道時代の塗色に復元されており、
年に数日しか走らないという貴重な車両である。
写真を撮るだけではなく、ぜひ乗ってみたいと思い、
出発前に電停まで行って乗り込み、岡山駅前電停までの乗車を愉しむ。
車内も3007と違ってほとんど手が加えられていない。
ドアの上には日光軌道線当時の“沿線案内図”まで残されている。



岡山駅前まで行って昼食を喰うために城下まで出たが、
ここで折り返してきた3007“KURO”と出会い、飛び乗る。
岡山駅前電停まで往復の乗車を愉しみ、城下から「かばくろ真栄田」に行って昼食を喰う。
午後から大雲寺前、新西大寺町筋、門田屋敷、郵便局前、田町、柳川と取材する。


 5.入場券制限2時間と「ひかり575号」

岡山電軌の未取材電停と車両取材が終了したのが3:00p.m.前で、
岡山から広島へ移動する新幹線は18:14に岡山を出発する。
3時間以上時間が余ってしまったため、
岡山駅の入場券を購入し、車両取材する。
岡山は新幹線停車駅ではあるが、在来線にも特急が発着し、
さらに瀬戸大橋線の実質上の始点となっており、
JR四国の列車も乗り入れている。
また津山線、吉備線の非電化路線も乗り入れているため、
乗り入れ車両はバラエティに富んでいる。

 EF210型162号機
 113系湘南色
 JR四国2000系「南海」
 キハ47形津山線快速
 JR四国8000系「しおかぜ」
 115系新塗色
 117系快速サンライナー色
 117系新塗色
 115系岡山色
 EF210型111号機
 EF210型2号機

このほかにも気動車は全車両取材を実施する。
その間に3番線4番線ホームにある「あじわい」でかき揚げうどん400円喰う。
駅の入場券の制限時間は2時間で、結局制限時間ぎりぎりまで取材を続ける。
改札を出てお土産などを買い、コインロッカーから旅行用バッグを取り出し、
事前に購入していた「ひかり575号」で広島まで行く。



車内には窓際の座席の足下にACコンセントがついており、
ケータイの充電やノートパソコンの利用も出来るようになっている。
ビジネスユースに配慮しているのだ。
このコンセントを利用してデジカメのバッテリーを充電させて貰う。



乗車時間が40分と短かったため、
岡山駅の売店で購入した廣榮堂本店の元祖きびだんごでブレイク。



犬や猿や雉が欲しいと云ってきたらあげようと思ったが、
残念ながら新幹線には乗っていなかった。
そして広島駅に到着した時にはすっかり日は暮れていた。



まずは予約していたヴィアイン広島にチェックインする。
ヴィアインには会員登録していて、会員証を持参していた。
チェックインには専用のチェックイン機を利用する。
会員証のカードがそのままホテルのキーとなり、
チェックアウトの必要がなくそのまま出て行くことが出来る。
部屋に入って荷物を下ろしてから夕食に出掛ける。


 6.疲弊の夜とスペシャルな朝

部屋に荷物を置いて出掛けたが、もう車両取材する気はなく、
一眼レフは置いてコンパクトカメラだけもって出掛ける。
広島に来て食事といったらいつも「ひろしまお好み物語 駅前ひろば」に行くことにしている。
今までにここには5回来ていて、「電光石火」には2回、
あとは「BOSS」、「こっちじゃん」、「焼くんじゃ」に1回ずつ来ている。
そこでそれ以外の店に行くことにして、
気になっている「縁奇縁」、「たむちゃん」、「広島のまるちゃん」から、
「縁奇縁」を選んで入店する。
オーダーは店長おすすめSP1,300円。
もう“仕事”は終わったので、ドリンクにウーロンハイをオーダー。
途中、コンビニでビールやつまみなどを買ってホテルに戻り、
テレビを見ながらさらに飲む。
早朝からの取材で疲弊が蓄積していたためか、飲みながらも眠くなって、
11:00p.m.前に就寝する。

翌朝は6:00a.m.にモーニングコールをセットして起床する。
シャワーを浴びて支度をしてからホテルを出る。
ヴィアイン広島にはホテル内に朝食を喰う施設がなく、
朝食付きのプランは隣接する「珈琲館」でパンかクロワッサンになる。
バイキングなら朝食付きにしたかったが、
簡単なモーニングなら無理して朝食付きのプランにする必要はない。
旅行用バッグをコインロッカーに入れ、
駅ビル内にある「味一 ひろしま3号店」に行く。



オーダーはスペシャルうどん500円。
トッピングがエビ天と肉と玉子という、正しくスペシャルなうどんである。



麺はコシはあまりなく、つるつるの丸い麺である。
つゆは関西風のダシの味が前面に出ているつゆ。
かき揚げは大きさは十分だが、厚さはない。
それでも体は温まった。
これから広電の取材に入っていく。


 7.広電取材-大失態からの挑戦

スペシャルうどんで腹を満たし、
広島駅前電停の券売機で電車一日乗車券600円を購入する。



広電の一日乗車券は磁気カードで、
乗車時と降車時にカードリーダーに通す方式である。
そして電車に乗り込んで蒼ざめた。
「行動予定表を忘れた!」
行動予定表は事前に一日の行動を一太郎に打ち込み、
プリントアウトして持参するもので、
取材対象や列車の乗車時間などの詳細が書かれている。

   2月5日(日)

  ※ヴィアイン広島チェックアウト

  ※広島電軌 路面電車1乗車券 \600購入
  ※広島電軌 全電停取材

 宇品線/
  -U9 皆実町六丁目-…-U11 県病院前-U12 宇品二丁目-
  U13 宇品三丁目-U14 宇品四丁目-U15 宇品五丁目-

 13:37広島-山陽・東海道新幹線「のぞみ32号」(236/3:56)-17:33東京

これがないと取材すべき電停も撤収時間も分からない。
新幹線の時間は確か午後1時台にしたことを何とか覚えていたので、
最終撤収時間を1時前にすれば何とかなるが、
取材対象はさすがにうろ覚えであった。
広島駅前電停まで戻っていったんバッグを取り出し、
もう一度コインロッカーを再利用しようかと思ったが、
考え直してそのまま行くことにした。
今回の取材はホームページ「ライトレールの時代」のための取材であり、
逆に云えば「ライトレールの時代」を見れば取材すべき電停が分かる。
そこに公開されていない電停を取材すればいいのである。
そこでケータイから「ライトレールの時代」にアクセスし、未掲載電停を確認した。
取材すべき電停は6つであった。
その全電停を取材してもまだ時間は十分に余っていた。


 8.三たびの天神川と雪の遅延の帰京-旅の終わり

広島駅前に戻って「ひろしまお好み物語 駅前ひろば」に行き、
「広島のまるちゃん」で昼食としてゴージャスじゃん目玉\1,250円喰う。
それでも時間が余ったため、
JR広島駅の入場券を購入してホームで車両取材しようかと思ったが、
去年も2回、ホーム取材を決行しているため、
今回は隣駅の天神川に行って車両取材することにした。
天神川駅は広島駅から2.3kmの距離にある駅で、2004年に開業した。
天神川から広島にかけて広島貨物ターミナル駅があり、
上下線の間にも機関車の留置線や仕業検査場などがあり、
上り線と下り線ではホームが独立している。
上り線の方に駅舎があり、広島方に広島車両所の車両置き場もある。
このホームから留置している機関車の車両取材をするのだ。
今回はディーゼル機関車の留置はなく、
EF67型とEF210型の電気機関車のみであった。
EF67型電気機関車は山陽本線の瀬野から八本松間の大山峠の急勾配、
通称“瀬野八”を通過するための補助機関車である。
EF210型は国鉄分割民営化後のJR貨物が製造した電気機関車である。

 EF210型106号機
 EF67型104号機
 EF67型2号機
 EF67型103号機
 EF210型145号機
 EF67型1号機

広島に戻ってコインロッカーから荷物を取り出し、お土産を購入して、
13:37広島発の山陽・東海道新幹線「のぞみ32号」で東京まで行く。


既に昼食は喰っているため、
売店で「高可」のたこ天80g500円に宮島ビールを購入し車内で喰う。



途中、米原のあたりで積もった雪のために徐行することになり、
そのため名古屋には3分遅れの到着になってしまった。
それでも小田原を通過する頃には定刻の運転となっていた。
東京から総武快速線のグリーン車で津田沼まで行き、緩行線に乗り換えて帰る。
今回の旅で岡山電軌、広島電鉄の未取材電停のすべてを取材することが出来た。
これで日本の路面電車21社の全電停603電停のうち、
未取材なのは富山地方鉄道の新規開業線である富山都心線の4電停と、
再取材の本線の南富山駅前電停のみである。
この残り5電停は年内には取材出来るだろう。
ライフワークとしてやってきた路面電車の全電停取材もまもなく完了することになる。

 -撮影記録-

2012.02.03. 撮影 72枚 保存 5枚
02.04. 撮影 1649枚 保存 104枚
02.05. 撮影 749枚 保存 38枚

 合計   撮影 2470枚 保存 147枚 保存率 6.0%





REI RINGONO travelnotes
All rights reserved,
Copyright (C) Semisweet Apple Company and REI RINGONO 2013

inserted by FC2 system