子供の頃の夢−リニアモーターカーへの試乗



 1.21世紀の夢の鉄道

子供の頃に「将来大人になったら何になりたいか」と良く聞かれたと思う。
当時どの様答えていたのか資料がないので正確には分からないが、
それでも父が国鉄職員だったことから電車に対する憧れは強くあった。
もしかしたら幼い頃からマインドコントロールされていたのかも知れない。
子供の頃、父から「鉄道図鑑」を貰った。
子供向けのもので、当時の特急、急行などが詳しく乗っていたし、
振り子式電車などの最新技術が子供向けに解説してあった。
その中の最後のページに21世紀の未来の鉄道としてリニアモーターカーが紹介されていた。
実現可能な技術として既に研究段階に入っていると書いてあった。
21世紀になったら本当にリニアモーターカーに乗れるかも知れない。
子供の頃はそんな風に考えていた。
ところが去年の「21世紀 夢の技術展」で、にリアモーターカーが未来の鉄道ではなく、
既に一般人を乗せての試乗会を開催するまでに至っていることを知った。
自分の知識の中には無人の試作機が走っているイメージしかなかったのだが、
既に技術的には現実可能であると現国土交通省からも承認され、
中央新幹線として更なる安全性、耐久性やコストパフォーマンスに取り組んでいるのだという。
このことを知った時から何時かリニアモーターカーに乗ってみたいと思っていた。
そしてJR東海のホームページでリニアモーターカーの試乗会を募集しているのを知って、
常にチェックし、そして遂に8月と9月に募集しているのを知りダメ元で応募してみた。
ところがなんと8月に入って「リニア試乗会」事務局から一通の封書が届いたのである。

※写真:「21世紀 夢の技術展」に展示してあるにリアモーターカーの1/1モデル 撮影時刻 2000/07/22 14:06:02

Date: 26 Aug 2001 22:07:47


 2.2001年8月25日

その封書には「ご当選おめでとうございます。」と書かれて手紙と共に、
リニア試乗会参加パスが入っていた。
2001年8月25日、受付時間10:50と書かれていた。
早速返信葉書に参加の意向を記入して投函する。
そしてその8月25日がいよいよ来た。
何時も会社に行く時間に起床して津田沼に行き、「POT & POT津田沼店」でモーニングカレー喰う。
総武線快速で東京駅に行き、始発の高尾行き中央線快速に乗り込む。
東京から70分、程良い微睡みのあと、高尾駅に着く。
高尾駅の天狗の鼻を眺めつつ、始発の大月行きに慌てて飛び乗る。
大月までは201系のバーミリアンカラーの電車が走っているが、
ここから先の中央本線は115系湘南色。
四方津で特急「あずさ」と特急「かいじ」の通過待ちをしたあと、09:49に大月に着く。

※写真:津田沼の「POT & POT津田沼店」 撮影時刻 2001/08/25 07:07:23

Date: 26 Aug 2001 22:09:48


 3.リニア以外に何もない禾生

JR大月駅から乗り越し1,280円で一度駅の外に出て、富士急行の大月駅から290円で禾生へ。
富士急のホームに入ったがJRから直通の167系の方が先に発車すると知り慌てて飛び乗る。
禾生までは約10分で着く。
因みに「禾生」と書いて「かせい」と読むらしい。
富士急行は単線で駅は一応有人だが、
年輩の女性がひとりいるだけで電車が来るのでは改札に鎖を掛けてある。
駅を出てから約15分でリニア見学センターに着く。
招待状には地図らしい地図はないが道はひとつしかなく、
炎天下の中を汗だくになって歩いていくとリニア見学センターが見えてくる。
リニア見学センター以外には畑しかなく、非常にのどかなところである。
寧ろこの田園風景だからこそ、リニアの最新技術が際だつのかも知れない。
15分くらい前に着く。
それにしても汗だくでヘトヘトになってしまった。

※写真:リニア小形山陸橋以外に何もない禾生駅付近 撮影時刻 2001/08/25 10:34:35

Date: 26 Aug 2001 22:11:35


 4.リニアモーターカー

受付時間は10:50a.m.で、15分くらい余裕があったので、先にリニア見学センターを見学する。
リニアモーターは鉄道車両のモーターを平らに延ばしたようなもので、
磁石の引き合う力と反発する力を上手く利用して浮力と推進力を利用する。
車体には超電導磁石が備えられている。
液体ヘリウムで−269度の状態に保つことで、
電気抵抗がゼロになり一度コイルに電気を流すと永久に流れる。
これを利用して車体の磁力を維持するのである。
リニアモーターカーは始め車体のゴムタイヤによって走行するが、
時速130km/hを越えたあたりから浮遊が始まる。
超電導の技術がリニアを実現に一歩近づけた。
リニアモーターカーは現在552.7km/hの鉄道としては世界最速の記録を保持している。
リニアモーターカーの技術を堪能していると10:50a.m.になり、試乗会受付が始まった。

※写真:実験センターにあったリニアの模型 撮影時刻 2001/08/25 10:50:27

Date: 26 Aug 2001 22:12:33


 5.450km/h

受付のあと、カンファレンスルームで大まかな技術的説明と注意事項の案内があり、
そのあといよいよ乗車となる。
リニアの乗車は乗降装置と呼ばれる専用の通路から乗車する。
リニアの扉は抵抗性を考慮して上に開く様になっており、そこに専用の通路を接続する。
ちょうど飛行機に空港から直接乗り込む装置のようだ。
席について係員から説明がある。
試乗時間は約25分で一度バックで東京寄りの試乗ポイントに移動し、
そこから笹子トンネル内の最終ポイントまで一気に加速して走行する。
今回の試乗の最速は450km/hでその最速試乗時間は約40秒だった。
最初はタイヤで走っているが130km/hを越えた頃から浮上を開始する。
車内でもその音で浮上したのが分かる。
最速450km/hにはアッという間に加速し、そしてまた直ぐに減速するという感じだった。
実験線は全長42kmあるが試乗区間は安全性を考慮して19kmしかない。
試乗は本当にアッという間に終わってしまった。
子供達は何故か途中で泣き出し、車内は騒々しかったが、
それでも子供達には良い経験になったであろう。
下車したところで乗車証明書を貰う。
ちゃんと名前と日付入り のカードである。

※写真:時速表示が450km/hを表示した瞬間 撮影時刻 2001/08/25 11:39:05

Date: 26 Aug 2001 22:14:30 +0900


 6.リニアモーターカー全景

試乗会が終わってから見学センター3階の展望室で次の実験走行を見学した。
自分で試乗していたので車両がどのように動くかはよく分かっていた。
それでも最速450km/hで走行する時には本当にアッと云うまで、
カメラを構えていたがシャッターを押すタイミングを逸脱してしまった。
見物していた人たちもそのあまりの早さにみんな「うおおっ」という歓声を上げていた。
リニアモーターカーの山梨実験線はその殆どがトンネルの中で、
地上に出ている部分は見学センターのある部分を含めてごく僅かである。
実験センターに試乗客を降ろすために戻ってきたところでようやくの全景を撮影することに成功する。
最速550km/hで走っているためにその車体は煤汚れていたが、
それでもその未来的な車体にはワクワクするものがある。

※写真:エアロウェッジタイプの先頭車とリニア全景 撮影時刻 2001/08/25 12:24:02

Date: 26 Aug 2001 22:15:56 +0900


 7.穏やかな微睡み

そしてこのリニア見学センターをあとにした。
また炎天下の禾生の街を15分かけて歩いた。
空は一面晴れ渡り、田畑の中には時折鳥を追い払うためか、銃砲のような音が鳴り渡る。
それ以外には何もない風景だった。
近くを流れる川のせせらぎや畑に咲くひまわりが美しい。
禾生の駅に着いて電車が来るまでの20分間、
近所の酒屋で缶ビールを買い、近所のスーパーでロッテのトッポを買って、駅舎で飲む。
スーパーはかなり高齢のおばあちゃんがひとりで店番をしていて、
おっとりとレジ打ちをしていた。
ビールの微かな酔いに午後の穏やかな日差しが緩やかに微睡みに誘う。
5000系トーマス列車に乗って大月に戻る。
大月から115系で八王子、八王子から快速で東京に戻る。
東京駅で「あじさい」に入り、カレーうどん喰う。
そのあといつもの9番、10番線ホームへ行き、
kioskでビールとおにぎりを買い、ベンチで飲む。
眠さが増してきたので座って帰ろうと思い、
京葉線経由で西船橋に出て総武線で帰ろうと思った。
しかし武蔵野線の中で思わず寝込んでしまい、新松戸まで行ってしまった。
とほほ・・・。

※写真:リニア見学センター出口付近から見た実験センターと禾生の風景 撮影時刻 200
1/08/25 12:29:39

Date: 26 Aug 2001 22:17:37



 ※「テーマの果実の樹」2001年8月テーマ「子供の頃の夢」より改題及び改稿

初出:ASAHIネットの電子フォーラム、serori・network「テーマの果実の樹」





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