それぞれの旅



 1.最北端/最西端

宮脇俊三氏の鉄道に関するエッセイ「駅は見ている」で、
古川と小牛田の衰勢について読んだ。
奥州街道の宿場町として栄えた古川だが、
東北本線の開通で小牛田に繁栄が移り、
新幹線の開通で再び古川が再び脚光を浴びた。
日本鉄道が施設し、後に国鉄に買収され東北本線となった東京と北を結ぶ路線は、
小牛田で新庄からの陸羽東線、石巻とを結ぶ石巻線などが接続し、
また車両基地としても機能している。
古川は陸羽東線の駅のひとつに過ぎなかった。
しかし東北新幹線は古川を通り、
仙台へ15分とアクセスの良さも手伝って、
この街は再び栄えだしたのだ。
今回、土日きっぷでこの古川駅と小牛田駅を見に行くことにした。
基本的に雑誌や本で読んだ情報を鵜呑みにして出かけたりすることは嫌いなのだが、
古川と小牛田は土日きっぷで行ける最北端でもあるので、
「Station−駅から始まる物語」のためにこの二つの駅を取材しに行くことにしたのだ。
また、土日きっぷで行ける最西端である南小谷にも挑戦する。
中央本線の特急である「あずさ」だが、「スーパーあずさ」は松本から大糸線に入り、
JR東日本管区の最西端である南小谷まで直通している。
今回は新型特急E257系の初乗車も含め、南小谷まで行くことにする。
因みに「南小谷」は「みなみおたり」と読む。
6月8日土曜日、「Maxやまびこ31号」で最北端の古川まで行き、
奥の細道湯けむりラインの愛称で呼ばれている陸羽東線で小牛田まで往復し、
「Maxやまびこ38号」で福島まで戻り、つばさ117号で米沢まで行き、
米坂線で2時間17分掛けて坂町まで出る。
坂町から「いなほ12号」で新潟まで出て、「Maxあさひ326号」で東京まで戻る。
6月9日日曜日、新宿からE257系「あずさ53号」で松本まで行き、
「スーパーあずさ5号」で南小谷へ。
ここで臨時の「しなの24号」で白馬まで戻り、
「スーパーあずさ10号」で新宿まで戻る。

6月9日の1ヶ月前、5月9日に土日きっぷを購入する。
この日は夜に急に会議が入ったため、
仕事中、埼京線浮間舟渡駅の“みどりの窓口”に行って購入する。
この期間は「土日きっぷスペシャル」となっている。
「・・・スペシャル」と云っても半額になるのは中高生と小児だけで、
大人は普通の土日きっぷと同額の16,000円で別にスペシャルでも何でもない。
同時に指定席も取るが2日分で12枚もあったため、発券に20分以上かかってしまう。
後ろに並んでいる人にとっては非常に迷惑だっただろうが、
何はともあれ、これで6月の土日きっぷの旅は全ての指定席が予定通り取れたのだった。

Date: 8 Jul 2002 01:05:35


 2.小牛田/古川

6月8日土曜日、4:00a.m.に起床して、
4:55a.m.発の御茶ノ水行きに乗り津田沼へ行く。
15分待って快速に乗り換えて東京へ。
5:45a.m.地下ホームに滑り込んだ快速を降りて、
エスカレーターや階段を次々上り、
JR東日本新幹線改札を入場、
売店で朝食の鳥めしと缶ビールを購入し、
6:04a.m.東京発のMaxやまびこ31号6号車2階21番B席に着く。
2時間18分の新幹線の旅を楽しみ、
土日きっぷで行ける最北端の新幹線の駅“古川”に行く。
在来線のホームに下りて、
停車中の陸羽東線キハ112系4両編成に乗り込む。
客は殆どいなかった。
約13分で土日きっぷで行ける東北本線の最北端“小牛田”に着く。
ここでの取材時間は15分。
“小牛田”は新幹線に見放された東北本線の駅で、
かつての繁栄も今は昔・・・というイメージを持っていったのだが、
駅前は整然と整備され、
「カリヨンの時計塔」という謎のオブジェがロータリーの中心にあり、
駅前通りの満天星通りの人工の小川には地下水が流れ、
100匹もの鯉が泳いでいる。
平成5年には手づくりふるさと賞が建築大臣から授与されている。
確かに乗降客はそんなに多くないが、
うらぶれた・・・というイメージはない。
9:01a.m.の陸羽東線で再び古川に戻り、
ここで45分間の駅取材をする。
駅前には「大正デモクラシーの旗手 吉野作造生誕の地」というモニュメントがあるが、
はっきり云って「吉野作造って誰!」という感じだ。
他の新幹線のある地方駅と同様に、
駅前にはバスやタクシーのロータリーがあり、
それなりの賑わいを見せているのだが、
駅から少し離れると地方の寂れた街並みが続き、
それがかえって駅前の賑わいを虚ろに見せている。
“古川”と“小牛田”、
対照的な二つの街にも、
それぞれの人たちのそれぞれの人生が輝いている。

※写真:小牛田駅前の“カリヨンの時計塔” 撮影時刻 2002/06/08 09:10:16

Date: 8 Jul 2002 01:07:25


 3.米坂線ディーゼル列車の旅

9:58a.m.のMaxやまびこ38号で福島まで戻り、
駅取材をしてからつばさ117号で米沢へ。
ここでも駅取材をして、
0:16p.m.の米坂線で2時間17分、
羽越本線の坂町まで気動車の旅を楽しむ。
気動車はキハ47形552号車+キハ52形102号車で、
みんな何故かキハ47の方に集まっていた。
キハ52の方に移ってみて初めて分かったのだが、
キハ47は冷房車だが、
キハ52は冷房設備がなく、
天井では扇風機が360度に首を振って頑張っていた。
写真を撮るため窓を開けたいので、
我慢してキハ52に乗り込む。
米坂線は日本を縦断する形で引かれた単線の路線で、
今泉で第3セクターの山形鉄道と接続するほかは、
田園風景や山岳地帯のみどりの中をただひたすら走り続けた。
途中で学生が大勢乗り込んできたが、
何駅かのうちに殆ど下り、
途中からは車両の中に一人になっていた。
米沢で弁当を買いそびれたので、
空腹に苛まされたが、
それでもみどりの風を十分に堪能したローカル線の旅は、
2:33p.m.坂町で終わった。
昼食を喰おうと下車して駅前を少し歩くが、
駅前の店は全てしまっていて、
開いていたのはLAWSONだけだった。
仕方がないのでLAWSON荒川坂町店で弁当とお茶を買い、
坂町のホームの待合室で喰う。
折角の旅行なのに何でLAWSONの弁当を喰わなきゃいけないのだろうか・・・。
3:34p.m.のいなほ12号で新潟に出て、
乗り換え時間11分でMaxあさひ326号で東京に帰る予定だったが、
いなほ12号が坂町−平林間の踏切で緊急停車してしまう。
操作機が使われたためのもので、
坂町の駅員が安全確認に向かい、
結局9分遅れで坂町を発車することになる。
しかし新潟駅ではMaxあさひ326号はいなほ12号の接続を待って発車してくれたので、
予定通り帰ることが出来た。
東京からはしおさい11号で千葉まで戻り、
各駅停車で戻ることにする。
多少のハプニングはあったものの、
1日目の旅は無事に終了することが出来た。

※写真:米坂線の車窓から後方を望む 撮影時刻 2002/06/08 14:32:31

Date: 8 Jul 2002 01:09:32


 4.成城マダム御用達

6月9日日曜日、土日きっぷスペシャルの旅2日目は、
この切符で行ける最南端“南小谷”を目指す。
6:28a.m.幕張発で船橋に行き、
6:52a.m.あずさ51号で新宿へ行く。
183系あずさに乗れるのも今年度いっぱい。
来年度には全てE257系に置き換えられる。
7:28a.m.に新宿に着き、
ここから9:00a.m.発のE257系あずさで松本まで行く。
敢えてE257系にこだわったため、
乗り換え時間が1時間半もある。
新宿駅構内でいろいろと取材する。
少し時間を持て余し、
駅の中にある「成城石井・ルミネ新宿店」でおにぎりとお茶を買い、
ホームのベンチで喰うことにする。
わざわざ「成城・・・」と付けているからには、
成城では有名な店なのだろうか・・・。
そういえば何となくパンもおにぎりもお上品で少し高級な気がする。
成城マダム御用達の店なのだろうか・・・。
9:00a.m.のあずさ53号で松本に行く。
確かに新しい車両は乗り心地が良い。
3時間弱で松本に着く。
ここでスーパーあずさ5号に乗り換えて南小谷に行く。
殆どの客が松本で降りてしまったのか、
客は殆ど乗っていない。
指定席よりも自由席の方が空いているくらいだ。
前の椅子を回転させて、
足を投げ出しながらゆったりと乗る。
ボックス席4つを独り占めである。
1:46p.m.に南小谷に着く。

※写真:松本駅に到着したE257系 撮影時刻 2002/06/09 12:22:29

Date: 8 Jul 2002 01:10:39


 5.南小谷の初夏

大糸線は中央東線、中央西線の終着駅である松本から、
北陸本線の糸魚川までを繋ぐ単線で、
松本から南小谷までの31駅はJR東日本管区、
南小谷から糸魚川までの7駅はJR西日本管区、
つまりひとつの路線で途中から所属する会社が変わるという、
国鉄の分割民営化の影響で何とも奇妙な路線になった。
しかも単線のために直通車両はなく、
お互い南小谷で折り返し運転している。
スーパーあずさも南小谷まで来て、
ここで折り返し運転されている。
南小谷は目の前には姫川が流れ、
安曇野の緑の綺麗な駅である。
北緯36.4617度、東経137.5441度に位置し、
東京から中央線経由で321.7km、
名古屋から中央線経由で259.0km、
大阪から北陸線経由で441.4kmの位置にある。
・・・と駅に書いてあった。
駅前には何台かのタクシーが停まっていたが、
ほかには何もなかった。
コンビニも商店街も、kioskさえなかった。
昼食を喰っていないのだけれど、買うところはなかった。
2:09p.m.南小谷発のしなの24号で白馬まで戻る。
この“しなの”は383系ワイドビュータイプではなく、
旧型の振り子式381系で、国鉄色タイプ。
381系「しなの」は既に2編成しかなく、
定期運用は終わり臨時列車としてしか運行されていない。
今回は廃車が近いこの381系にどうしても乗りたくて、
わざわざ南小谷まで来たのだ。
しかし南小谷で乗った乗客は自分一人しかいなかった。
これじゃ廃車も時間の問題だな・・・。
白馬で下車し、下りで乗ったスーパーあずさが折り返してくるのを待つ。
白馬での駅取材で昼食を喰っている暇がなくなってしまい、
スーパーあずさ10号車内で弁当とビール買って喰う。
6:34p.m.に新宿に着く。3時間30分の旅は長かった。
7:33p.m.池袋発の成田エクスプレス45号の指定席を取ってあったが、
1時間近く時間があったので、
三鷹まで行き「小竹林」で月見うどん\340喰う。
しかしゆっくり喰っていたら時間がなくなってしまい、
成田エクスプレス45号に間に合わなくなってしまった。
仕方がないので8:09p.m.の千葉行きのあずさの自由席に座る。
1号車1番Aだった。
千葉まで行って緩行線で戻る。
9:17p.m.に家に着く。

※写真:南小谷駅前から見た姫川 撮影時刻 2002/06/09 14:18:29

Date: 8 Jul 2002 01:13:11



 ※「テーマの果実の樹」2002年6月テーマ「それぞれの旅」より改稿

初出:ASAHIネットの電子フォーラム、serori・network「テーマの果実の樹」




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